環境計量士のメモ書き

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仕事上のメモ。忘れがちな事、気付いた事等

BOD分析時の酸化性物質の処理

酸化性物質を含む試料のBODを分析する場合、酸化性物質を処理する必要があります。

処理についてのメモになります。


目次

亜硫酸ナトリウムが過剰の場合の計算

酸化性物質の処理には亜硫酸ナトリウムを使います。加える亜硫酸ナトリウムが過剰だと溶存酸素が無くなってしまいますので、必要量を滴定で算出します。多少多いくらいなら曝気しながら少し待てば大丈夫です。
亜硫酸ナトリウムを過剰に入れた時に、どのくらい影響があるかの計算です。

亜硫酸ナトリウム溶液の濃度
  1.6 (g) ÷ 126 (g/mol) ÷ 1 (L) = 0.0127 (mol/L)

亜硫酸ナトリウム溶液(12.5 mmol/L) JIS K 8061に規定する亜硫酸ナトリウム1.6 gを水に溶かして1 Lとする。使用時に調製する。

引用元:JIS K0102 21 a) 試薬 8)

亜硫酸ナトリウム溶液1mL中の亜硫酸ナトリウムの量
  0.0127 (mol/L) × 1/1000 (L) = 0.0000127 (mol)
亜硫酸イオンと溶存酸素の反応
  \rm{2SO_{3}^{\  2-} + O_2 → 2SO_4^{\ 2-}}
亜硫酸1mol当り0.5molのO2を消費、0.5molのO2は16gに相当します。
  0.0000127 (mol) × 16 (g) = 0.0002032 (g)
  0.0002032 (g) = 0.2032 (mg)
従って、亜硫酸ナトリウム溶液を1mL過剰に加えると0.2032(mg)の溶存酸素を消費します。試料100mLに対して亜硫酸ナトリウム溶液を1mL過剰に入れたケースだと濃度としては約2mg/L減る計算になります。

残留塩素濃度と亜硫酸ナトリウムの必要量

酸化性物質の処理が必要なケースの多くは残留塩素に因るものだと思います。残留塩素の濃度と亜硫酸ナトリウムの必要量を計算してみます。
  \rm{ClO^{-} + SO_3^{\  2-} → Cl^{-} + SO_4^{\  2-}}

残留塩素1.0 (Cl mg/L)の試料100mLを(0.0127mol/L)亜硫酸ナトリウム溶液で処理する場合
残留塩素が1.0 (Cl mg/L)の試料100mL中の残留塩素
  1 (mg/L) × 100/1000(L) = 0.1 (mg)
  0.0001(g) ÷ 35.5 (g/mol) = 0.00000282 (mol)

(0.0127mol/L)亜硫酸ナトリウム溶液1mL中の亜硫酸イオンは0.0000127molで、亜硫酸イオンと次亜塩素酸イオンの反応は1:1なので
  0.00000282 ÷ 0.0000127 = 0.222mL

従いまして残留塩素1.0の試料だと、試料100mLに対して亜硫酸ナトリウム溶液を約0.22mL加える必要があります。この時、0.10mL多めに加えたとしても溶存酸素濃度は約0.2mg/Lしか減少しません。15分後の溶存酸素を測定する段階で亜硫酸を消費しきっていれば問題ありません。消費しきれていなくても影響はわずかです。

処理手順(参考)

参考で酸化性物質の処理手順を載せときます。JISに書いてある通りです。

 試料100mLを適当な容器に分取
       ↓
 アジ化ナトリウム0.1g加える
       ↓
 ヨウ化カリウム1g加える
       ↓
 塩酸(1+1)を加える (1~2mL)
       ↓
 暗所で数分間放置
       ↓
 でんぷん溶液加える
       ↓
 亜硫酸ナトリウム溶液で滴定
       ↓
 上記とは別に試料を分取(BOD仕込む用)
       ↓
 滴定で求めた亜硫酸ナトリウム必要量を加える
       ↓
 必要に応じてpH調整
       ↓
 曝気
       ↓
 BOD仕込み開始

残留塩素などの酸化性物質を含む試料 あらかじめ試料100 mLにJIS K 9501に規定するアジ化ナトリウム0.1 gとよう化カリウム1 gとを加えて振り混ぜた後,塩酸(1+1)(JIS K 8180に規定する塩酸を用いて調製する。)を加えてpHを約1とし,暗所に数分間放置する。遊離したよう素をでんぷん溶液を指示薬として亜硫酸ナトリウム溶液(12.5 mmol/L)でよう素でんぷんの青い色が消えるまで滴定する。別に,同量の試料をとり,先の滴定値から求めた計算量の亜硫酸ナトリウム溶液(12.5 mmol/L)を加えて残留塩素を還元した後,必要ならば水酸化ナトリウム溶液(40 g/L)又は塩酸(1+11)を用いてpH約7とする。

引用元:JIS K0102 21 c) 試料の前処理 2)

ちょっと考察

以上の事を踏まえまして、総残留塩素が極端に高くなければ、総残留塩素濃度から亜硫酸ナトリウム溶液の添加量を決めても良いのかと思いました。残留塩素1mg/Lを処理するのに、通常の倍の量の亜硫酸ナトリウム溶液を加えたとしても溶存酸素は0.4mg/L位減少するだけです。そして、0.4と言う数値がそのままBODの値に影響する訳ではありません。15分後の溶存酸素を測定するまでに、亜硫酸ナトリウムと溶存酸素の反応はそれなりに進むので影響は限定的と思われます。

まとめ

※亜硫酸ナトリウム溶液をJISの通り作った場合
・試料100mLに対して亜硫酸ナトリウム溶液1mL過剰で溶存酸素は2mg/L減少
・残量塩素1.0mg/Lの試料100mLを処理するのに必要な亜硫酸ナトリウム溶液は約0.22mL