環境計量士のメモ書き

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仕事上のメモ。忘れがちな事、気付いた事等

CODMnの滴定範囲


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CODMn


 

CODMnを久しぶりにやる機会がありました。操作自体は覚えていました。しかし、滴定量がどの範囲までOKだったかを、忘れてしまってました。滴定量が5mL位なら大丈夫なのは覚えてましたが・・・。

 

 

CODMn滴定範囲

JISの試料の適量をフラスコにとる旨が書いてあるとこの注意書きに記載があります。

過マンガン酸カリウム溶液の残留量が4.5~6.5mLです。と言う事で滴定量としては空試験差し引き後の値で3.5~5.5mLになればOKです。


30分間加熱した後の5 mmol/L過マンガン酸カリウム溶液の残留量が4.5〜6.5 mLになるような量。ただし,試料のCODMnがO 11 mg/L以下の場合には,100 mLとする。

 

引用元:JIS K0102 17 注(5)

 

空試験の滴定量

空試験の手順を一応簡単に書きます。純水100mLに硫酸、硝酸銀、5mmol/L過マンガン酸カリウム10mLを加えて、30分加熱します。その後に12.5mmol/Lしゅう酸ナトリウム10mLを加えて過マンガン酸カリウムを消します。そして5mmol/L過マンガン酸カリウムで滴定します。しゅう酸ナトリウムを少し濃いめに作るのでその分が滴定量になります。水が汚いと過マンガン酸カリウムが消費されて空試験の滴定量が余分に高くなります。

JIS通りに、しゅう酸ナトリウム溶液を調製すると濃度は13.4mmol/Lになります。

  1.8(g) ÷ 134(g/mol) ÷ 1(L) = 0.0134328 (mol/L)


4) しゅう酸ナトリウム溶液(12.5 mmol/L) JIS K 8528に規定するしゅう酸ナトリウム1.8 gを水に溶かして1 Lとする。ただし,5)の5 mmol/L過マンガン酸カリウム溶液のモル濃度の2.5倍より僅かに高いモル濃度のものを調製する。

 

引用元:JIS K0102 17  a) 試薬

 

5mmol/L過マンガン酸カリウム溶液10mL中の過マンガン酸カリウムの量

  5(mmol/L) × 10/1000(L) = 0.05(mmol)

13.4mmol/Lしゅう酸ナトリウム溶液10mL中のしゅう酸ナトリウムの量

  13.4(mmol/L) × 10/1000(L) = 0.134(mmol)

過マンガン酸カリウムとしゅう酸ナトリウムの反応は2:5です。

2KMnO4 + 5Na2C2O4 + 8H2SO4 → 

           2MnSO4 + K2SO4 + 5Na2SO4 + 8H2O + 10CO2

0.05mmolの過マンガン酸カリウムと反応するしゅう酸ナトリウムの量

  0.05(mmol) × 2.5 = 0.125(mmol)

残りのしゅう酸ナトリウムの量

  0.134(mmol) - 0.125(mmol) = 0.009(mmol)

0.009mmolのしゅう酸と反応する過マンガン酸カリウムの量

  0.009(mmol) × 2/5 = 0.0036(mmol)

5mmol/L過マンガン酸カリウム溶液の量をX(mL)とおく

  5(mmol/L) × X/1000 (L) = 0.0036(mmol)

  X(mL) = 0.72(mL)

過マンガン酸カリウム溶液のファクターが1で水の汚染等の影響が全く無い場合、空試験の滴定量は0.72mLを少し超えたところになる計算です。

残留量と滴定量

JIS規格上、CODMnの値が11を超える場合、過マンガン酸カリウム溶液の残留量が4.5~6.5mLになってないといけません。

定量としての範囲はどうなるのかと言う所で少し議論になる事があるようです。内容としては、空試験の滴定量を引く前の滴定量で3.5~5.5mLだと言う主張があるそうです。

なので一応、残留量が4.5~6.5mLの時の滴定量がどうなるかの計算を↓に書いときます。
<残留量4.5mLの時>
過マンガン酸カリウム溶液のファクターは1で計算します。

5mmol/L過マンガン酸カリウム溶液4.5mL中の過マンガン酸カリウムの量

  5(mmol/L) × 4.5/1000(L) = 0.0225(mmol)

13.4mmol/Lしゅう酸ナトリウム溶液10mL中のしゅう酸ナトリウムの量

※空試験のとこに書きましたが12.5mmolしゅう酸ナトリウム溶液はJIS通り調製すれば13.4mmol/Lになります。

  13.4(mmol/L) × 10/1000(L) = 0.134(mmol)

加熱後、しゅう酸ナトリウムを加えた段階での、未反応のしゅう酸ナトリウムの量

  0.134(mmol) - 0.0225 × 2.5 (mmol) = 0.07775(mmol)

0.07775mmolのしゅう酸と反応する過マンガン酸カリウムの量

  0.07775(mmol) × 2/5 = 0.0311(mmol)

5mmol/L過マンガン酸カリウム溶液の量をX(mL)とおく

  5(mmol/L) × X/1000 (L) = 0.0311(mmol)

  X(mL) = 6.22(mL)

となり、10 - 4.5 = 5.5mLに、空試験のとこで計算した0.72mLが上乗せされた数値になります。残留量が4.5mLなのでJIS規格上ギリギリOKです。空試験の滴定量を差し引く前の滴定量は5.5mLを超えますので、空試験の滴定量を引く前の滴定量で3.5~5.5mLだと言う主張だと、この測定値は使えない事になってしまいます。空試験を差し引けば5.5mLでギリギリOKです。

まとめ

 CODMnの滴定範囲は空試験差し引き後の値で3.5~5.5mL

 JIS規格の記載としては過マンガン酸カリウム溶液の残留量が4.5~6.5mL

 CODMnが11mg/L以下の場合は試料量100mLでやればOK

 空試験差し引き前の値で3.5~5.5mLと言う意見もある

(最後のは規格を素直に解釈すれば、違うと思うのですが・・・、稀に議論になる事があるみたいです。立場上相手に強く言えないケースも現実には多々ありますし・・・)