土壌の基準値変更(カドミウム、トリクロロエチレン)2021年4月1日~
2021年4月から土壌のカドミウムとトリクロロエチレンの基準値が改正になりました。
それに伴って、カドミウムの溶出と地下水の測定方法からフレーム原子吸光法が無くなりました。
環境省_土壌の汚染に係る環境基準についての一部を改正する件等の公布及び意見募集(パブリックコメント)の結果について
土壌環境基準
項目 | 改正後 | 改正前 |
カドミウム | 0.003mg/L※ | 0.01mg/L |
トリクロロエチレン | 0.01mg/L | 0.03mg/L |
※カドミウムに係る環境上の条件のうち検液中濃度に係る値にあっては、汚染土壌が地下水面から離れており、かつ、原状において当該地下水中の濃度が地下水1Lにつき0.003㎎を超えていない場合には、検液1Lにつき0.009㎎とする。
環境省_土壌環境基準 別表
土壌汚染対策法の基準値(土壌汚染対策法施行規則)
基準 | 改正後 | 改正前 |
土壌溶出量基準 | 0.003mg/L | 0.01mg/L |
土壌含有量基準 | 45mg/kg | 150mg/kg |
地下水基準 | 0.003mg/L | 0.01mg/L |
第2溶出基準 | 0.09mg/L | 0.3mg/L |
基準 | 改正後 | 改正前 |
土壌溶出量基準 | 0.01mg/L | 0.03mg/L |
地下水基準 | 0.01mg/L | 0.03mg/L |
第2溶出基準 | 0.1mg/L | 0.3mg/L |
土壌溶出基準 別表第四(第三十一条第一項関係)
土壌含有基準 別表第五(第三十一条第二項関係)
地下水基準 別表第二(第七条第一項関係)
第2溶出基準 別表第三(第九条第一項第二号関係)
特定毒物
特定毒物について簡単なメモ。
有機リンの分析で標準液を使いますが、有機リンの標準液(メチルジメトン、メチルパラチオン、パラチオン)は特定毒物に該当するので特定毒物研究者でなければ売ってもらえません。
特定毒物研究者の許可は都道府県知事が行います。
特定毒物とは ↓
第二条 この法律で「毒物」とは、別表第一に掲げる物であつて、医薬品及び医薬部外品以外のものをいう。
2 この法律で「劇物」とは、別表第二に掲げる物であつて、医薬品及び医薬部外品以外のものをいう。
3 この法律で「特定毒物」とは、毒物であつて、別表第三に掲げるものをいう。
↓の三がパラチオン、四がメチルジメトン、六がメチルパラチオン
別表第三
一 オクタメチルピロホスホルアミド
二 四アルキル鉛
三 ジエチルパラニトロフエニルチオホスフエイト
四 ジメチルエチルメルカプトエチルチオホスフエイト
五 ジメチル―(ジエチルアミド―一―クロルクロトニル)―ホスフエイト
六 ジメチルパラニトロフエニルチオホスフエイト
七 テトラエチルピロホスフエイト
八 モノフルオール酢酸
九 モノフルオール酢酸アミド
十 前各号に掲げる毒物のほか、前各号に掲げる物を含有する製剤その他の著しい毒性を有する毒物であつて政令で定めるもの
チオ硫酸ナトリウム
滴定で使う事がある
チオ硫酸ナトリウムについてのメモ
チオ硫酸ナトリウム
モル質量 約158 g/mol
チオ硫酸ナトリウム溶液(0.1mol/L)調製法
チオ硫酸ナトリウム五水和物( 分子量248.19) 26gと
炭酸ナトリウム0.2gを
溶存酸素を含まない水に溶かして1Lに定容
↓
気密容器で二日間放置
↓
使用時に標定
0.1 mol/Lチオ硫酸ナトリウム溶液 JIS K 8637に規定するチオ硫酸ナトリウム五水和物26 g及びJIS K 8625に規定する炭酸ナトリウム0.2 gを2. n) 1)の溶存酸素を含まない水に溶かして1 Lとし,気密容器に入れて少なくとも2日間放置する。標定は使用時に行う。
引用元:JIS K0102 19 a) 試薬 8)
チオ硫酸ナトリウム溶液の標定
・JIS k0102 19のCODOHのとこに記載があるヨウ素酸カリウムで標定する方法
反応)
手順)
ヨウ素酸カリウムを130℃で2時間加熱
↓
約0.72gはかりとる
↓
少量の水に溶かす
↓
メスフラスコで200mL定容
↓
20mLを300mL共栓三角フラスコにとる
↓
ヨウ化カリウム2g加える
↓
硫酸(1+5)5mL加える
↓
密栓して静かに混ぜる
↓
暗所で5分間放置
↓
水100mL加える
↓
チオ硫酸ナトリウム溶液で滴定
↓
空試験を行い滴定値を補正
↓
計算
計算式)
a : ヨウ素酸カリウムの分取量(g)
b : ヨウ素酸カリウムの純度(%)
x : 滴定値(mL)
標定 標定は,次による。
− JIS K 8005に規定する容量分析用標準物質のよう素酸カリウムを130 ℃で約2時間加熱し,デシケーター中で放冷する。その約0.72 gを1 mgの桁まではかりとり,少量の水に溶かし,全量フラスコ200 mLに移し入れ,水を標線まで加える。
− この20 mLを共栓三角フラスコ300 mLにとり,JIS K 8913に規定するよう化カリウム2 g及び硫酸(1+5)(JIS K 8951に規定する硫酸を用いて調製する。)5 mLを加え,直ちに密栓して静かに混ぜ,暗所に約5分間放置する。
− 水約100 mLを加えた後,遊離したよう素をこのチオ硫酸ナトリウム溶液で滴定し,溶液の黄色が薄くなってから指示薬としてでんぷん溶液(10 g/L)1 mLを加え,生じたよう素でんぷんの青い色が消えるまで滴定する。
− 別に,水について同条件で空試験を行って補正したmL数から,次の式によって0.1 mol/Lチオ硫酸ナトリウム溶液のファクター(f)を算出する。
ここに, a: よう素酸カリウムの質量(g)
b: よう素酸カリウムの純度(質量分率%)
x: 滴定に要した0.1 mol/Lチオ硫酸ナトリウム溶液量(補正した値)(mL)
0.003 567: 0.1 mol/Lチオ硫酸ナトリウム溶液1 mLに相当するよう素酸カリウムの質量(g)
引用元:JIS K0102 19 a) 試薬 8)
チオ硫酸ナトリウムとヨウ素の反応
途中
BOD分析時の酸化性物質の処理
酸化性物質を含む試料のBODを分析する場合、酸化性物質を処理する必要があります。
処理についてのメモになります。
目次
亜硫酸ナトリウムが過剰の場合の計算
酸化性物質の処理には亜硫酸ナトリウムを使います。加える亜硫酸ナトリウムが過剰だと溶存酸素が無くなってしまいますので、必要量を滴定で算出します。多少多いくらいなら曝気しながら少し待てば大丈夫です。
亜硫酸ナトリウムを過剰に入れた時に、どのくらい影響があるかの計算です。
亜硫酸ナトリウム溶液の濃度
1.6 (g) ÷ 126 (g/mol) ÷ 1 (L) = 0.0127 (mol/L)
亜硫酸ナトリウム溶液(12.5 mmol/L) JIS K 8061に規定する亜硫酸ナトリウム1.6 gを水に溶かして1 Lとする。使用時に調製する。
引用元:JIS K0102 21 a) 試薬 8)
亜硫酸ナトリウム溶液1mL中の亜硫酸ナトリウムの量
0.0127 (mol/L) × 1/1000 (L) = 0.0000127 (mol)
亜硫酸イオンと溶存酸素の反応
亜硫酸1mol当り0.5molのO2を消費、0.5molのO2は16gに相当します。
0.0000127 (mol) × 16 (g) = 0.0002032 (g)
0.0002032 (g) = 0.2032 (mg)
従って、亜硫酸ナトリウム溶液を1mL過剰に加えると0.2032(mg)の溶存酸素を消費します。試料100mLに対して亜硫酸ナトリウム溶液を1mL過剰に入れたケースだと濃度としては約2mg/L減る計算になります。
残留塩素濃度と亜硫酸ナトリウムの必要量
酸化性物質の処理が必要なケースの多くは残留塩素に因るものだと思います。残留塩素の濃度と亜硫酸ナトリウムの必要量を計算してみます。
残留塩素1.0 (Cl mg/L)の試料100mLを(0.0127mol/L)亜硫酸ナトリウム溶液で処理する場合
残留塩素が1.0 (Cl mg/L)の試料100mL中の残留塩素
1 (mg/L) × 100/1000(L) = 0.1 (mg)
0.0001(g) ÷ 35.5 (g/mol) = 0.00000282 (mol)
(0.0127mol/L)亜硫酸ナトリウム溶液1mL中の亜硫酸イオンは0.0000127molで、亜硫酸イオンと次亜塩素酸イオンの反応は1:1なので
0.00000282 ÷ 0.0000127 = 0.222mL
従いまして残留塩素1.0の試料だと、試料100mLに対して亜硫酸ナトリウム溶液を約0.22mL加える必要があります。この時、0.10mL多めに加えたとしても溶存酸素濃度は約0.2mg/Lしか減少しません。15分後の溶存酸素を測定する段階で亜硫酸を消費しきっていれば問題ありません。消費しきれていなくても影響はわずかです。
処理手順(参考)
参考で酸化性物質の処理手順を載せときます。JISに書いてある通りです。
試料100mLを適当な容器に分取
↓
アジ化ナトリウム0.1g加える
↓
ヨウ化カリウム1g加える
↓
塩酸(1+1)を加える (1~2mL)
↓
暗所で数分間放置
↓
でんぷん溶液加える
↓
亜硫酸ナトリウム溶液で滴定
↓
上記とは別に試料を分取(BOD仕込む用)
↓
滴定で求めた亜硫酸ナトリウム必要量を加える
↓
必要に応じてpH調整
↓
曝気
↓
BOD仕込み開始
残留塩素などの酸化性物質を含む試料 あらかじめ試料100 mLにJIS K 9501に規定するアジ化ナトリウム0.1 gとよう化カリウム1 gとを加えて振り混ぜた後,塩酸(1+1)(JIS K 8180に規定する塩酸を用いて調製する。)を加えてpHを約1とし,暗所に数分間放置する。遊離したよう素をでんぷん溶液を指示薬として亜硫酸ナトリウム溶液(12.5 mmol/L)でよう素でんぷんの青い色が消えるまで滴定する。別に,同量の試料をとり,先の滴定値から求めた計算量の亜硫酸ナトリウム溶液(12.5 mmol/L)を加えて残留塩素を還元した後,必要ならば水酸化ナトリウム溶液(40 g/L)又は塩酸(1+11)を用いてpH約7とする。
引用元:JIS K0102 21 c) 試料の前処理 2)
ちょっと考察
以上の事を踏まえまして、総残留塩素が極端に高くなければ、総残留塩素濃度から亜硫酸ナトリウム溶液の添加量を決めても良いのかと思いました。残留塩素1mg/Lを処理するのに、通常の倍の量の亜硫酸ナトリウム溶液を加えたとしても溶存酸素は0.4mg/L位減少するだけです。そして、0.4と言う数値がそのままBODの値に影響する訳ではありません。15分後の溶存酸素を測定するまでに、亜硫酸ナトリウムと溶存酸素の反応はそれなりに進むので影響は限定的と思われます。
まとめ
※亜硫酸ナトリウム溶液をJISの通り作った場合
・試料100mLに対して亜硫酸ナトリウム溶液1mL過剰で溶存酸素は2mg/L減少
・残量塩素1.0mg/Lの試料100mLを処理するのに必要な亜硫酸ナトリウム溶液は約0.22mL